「旅行先での旅館では、そこの地物が食べたい」
私も旅行先の旅館やホテルでは、これがとても大事だと思っています。
マグロやイカや甘エビのように、どこの旅館でも食べられる物ではなく、その土地や地方だからこそ食べられる食材や料理が大事です。
なぜ旅行では「地物」が食べたいのか
日本の全国各地にはそれぞれの食材や料理があり、せっかく旅行へ行くならそれを味わいたいと思うからです。
旅行で宿泊する旅館は休息という側面もありますが、普段住んでいる場所では体験できないものを求める一面もあります。
その体験の1つに食材や料理があり、旅行ではまだ行ったことのないその土地の料理や食材を食べたいと思うのです。
日本は東西南北に細長くなっており、北海道から沖縄まで食材や料理も全く違います。
私が沖縄に行った時には「ゴーヤづくし」でほろ苦い思いをしましたし、北海道に行くと「ウニやいくら」といった海鮮が豊富でした。
個人個人で好き嫌いはありますが、こういったその土地ならではの食材や料理の違いは、旅行者が旅先を決める上でも大きな要因になります。
ですから、海沿いの漁港にある旅館がその土地で穫れないマグロや甘エビのような食材を出すのではなく、その漁港に水揚げされる魚やその地方で愛されている郷土料理などを出すべきです。
海が目の前にあるのにも関わらず、他の地域で採れた魚を使っているとやはり冷めてしまうところがあります。
宿としては安定供給の面では必要かもしれませんが、その土地へ旅行をするとどうしても地物が食べたくなります。
伊豆の戸田の旅館には日本一の深海である駿河湾で採れるタカアシガニを出す旅館があります。
ズワイガニが食べられる宿はありますが、タカアシガニが食べられる地域は少ないですから大変貴重です。
また、かつて沼津港という観光地に行った時には駿河湾で水揚げされる「ユメカサゴの唐揚げ」が山積みにされておりビックリしました。
こういったその土地の食材が提供されていることを知ると、旅行サイトを見た時には「この宿へ行ってみたいな」「この料理どんな味がするんだろう」「ここは面白かった」と興味が湧いてきます。
このようにその土地の地物を提供すると、旅行者の気分は大きく変わってきます。
地物はそこでしか食べられない物も多く、その土地へ旅行したことを大きく肯定させてくれるものです。
何を出せば良いのか
宿泊客は地物であること、さらにどうしてそれが出るのかという理由がある食材や料理だと嬉しいです。
例えば、その土地でよく採れる山菜や野菜・きのこから、漁港で水揚げされる魚があります。
こういった「その土地では普通のもの」が実は旅行者にとっては新鮮で珍しい物になることがあります。
北海道のししゃもの刺身、会津のこづゆ、沼津のユメカサゴ、と歴史や文化に根ざした食材は各地にあります。
こういった物は旅館やホテルで提供されると、やはり旅行者としては嬉しい物です。
そこで何を知りたい?
また旅行者として他にも知りたいことが沢山あります。
- その食材と他の食材との違い
- なぜその土地でその食材や料理が生まれたのか
- その食材や料理のその土地での歴史
- まめ知識
ホテルや旅館はこういったことの説明が少ないですね。
この説明があるかないかで、その土地に対しての興味や関心は大きく違います。
もちろん、それ自体を知らなくても宿泊客は満足して帰っていきます。
しかし、この「へぇ〜そうなんだ!」と人間の知的好奇心をくすぐる体験があると、その旅館に対する印象も大きく好転します。
その地域の印象が大きく記憶に残るのでまた行ってみたいと思うんですよ。
例えば、伊豆の稲取には金目鯛が有名です。
この金目鯛は静岡県の調査で他の産地である千葉勝浦や神奈川三崎、高知などのものよりも脂が多く含まれているとあります。
これは伊豆稲取と伊豆大島の間にある漁場が金目鯛の餌であるプランクトンが発生しやすい地形になっており、餌が豊富であることが関係しているようです。
私も購入したことがあるのですが、稲取の金目鯛はブランドになっており、刺身には「サシ」が入っており和牛のようでした。
もちろん味も中トロのように脂が乗っており、あの淡白な鯛とは思えない味わいです。
確かに、一般のお客様は金目鯛の生態なんて知らないですし、各地の金目鯛の違いなんて考えたこともないはずです。産地を気にせずにスーパーで購入する人も多いのですから。
しかし、今自分が食べている物が「ここでしか食べられない」「これだけ他とは違うものである」と知れば知的好奇心が刺激されますし、その食事も欲を満たすものだけではなく、自分が各地の文化や郷土に触れている実感を感じさせてくれるものになります。
実際に伊豆の高級旅館ではこの金目鯛を使った宿がたくさんあります。
こういった体験があるのか無いのか、これは旅行を楽しく過ごせるかどうか大きく関わってきます。
仲居さんや従業員は「オタク」や「マニア」レベルだと嬉しい
そのためには地元をよく知られる仲居さんや従業員が居ると何でもアピールできるはずです。
特に新入社員や若い仲居さんにも「地元の歴史や風土」「その土地の食材の各地との違い」「食材や料理が文化や歴史としてどのように根付いて来たか」が説明できるとお客さんも喜ぶはずです。
お客さんは休養はもちろんですが、その土地の歴史や文化を体感したいのですから、マニアのような情報は聞き入ってしまいますから。