伊豆の稲梓から西伊豆の松崎へ抜ける婆娑羅峠近くには、大蛇に関する民話が残っています。
これは勇敢な2人の娘が父親の仇を打ったお話です。
大蛇と小杉原と蛇岩
むかし婆娑羅峠の近くに、大蛇が住んでおり近くの旅人や里人を飲み込んだりと悪さをしていた。
そんなとき甲斐(山梨)の弓名人の猟師が伊豆にやってきた。
ある日、猟師はこの大蛇が人に危害を及ぼしていることを耳にした。
里人は猟師に大蛇の退治を頼み込むと、弓名人の猟師は大蛇を射止めることを約束してくれた。
弓名人を大蛇をいる場所へ案内し、里人が鐘や太鼓を鳴らすと、それに気がついた大蛇が近づいて来た。
猟師は弓を引こうとしたところ、池の水が盛り上がり、大蛇の勢いの良さに間に合うず猟師は飲み込まれてしまった。
猟師の娘である2人娘はこの話を聞き、仇を取ろうと弓の稽古を重ねた。
そして、上達した2人は伊豆へ向かい、里人に大蛇のいる場所へ案内をしてもらった。
暗い夜に大きな岩に身を隠して大蛇を待つと、生臭い臭いと月のような鏡のような2つの光りが山からゆっくりと降りて来た。
2人の娘はこの光りに弓矢を強く引いて放ったところ、二つの光りに矢が刺さった。
その瞬間、大きな山鳴が響き渡り、大蛇は大きな岩に挟まって身動きができなくなった。
それから一週間もこの大蛇の鳴き声は里まで聞こえたという。
この2人の娘の妹は「小杉」といい、この地にとどまったことからこの地を小杉原といった。
大蛇が挟まった岩は蛇ヶ挟、大蛇の骨を里人が拾い葬った寺が蛇骨山大蛇院、のち大地院となり、大蛇の血が溜まった池は池代、そしてここに血源院が建てられた。
伊豆には蛇にまつわる伝説や民話が多い
伊豆の天城にある河津七滝は、かつて付近に住んでいた天狗が大蛇を倒し、その時に使用した樽を流したという民話が残ります。
七つの頭を持った大蛇を七つの樽に酒を入れ、大蛇に飲ませて酔わせることで大蛇を倒すことができた話です。
⇒ 伝説:天城の七滝 〜河津七滝の由来は3人の兄弟天狗が大蛇を退治して、七つの樽を滝に流したこと〜
またこの小杉原から南へ行くと「蛇石」があります。
蛇に似た石というよりも蛇が石にされたというほうが的確かもしれません。
ここ伊豆では蛇に関する民話や伝説が多く残っています。